純白を纏う

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「第二性とは、主に三つに分けられる。人口の約六割が第二性を持たないUsual(一般的)であることに対し、残りの四割は第二性のDomとSubでしめられる。そしてその四割のなかでも更に希少なのがSwitchであり、例年──」 教師の声が静かな教室内に響く。DomとSub。それは生まれながらにして定められたもう一つの性。DNAに刻まれるそれは決して抗うことの出来ない本能。 13歳頃から発現する第二性は与えられる身分証にその区分が記載される。一度判明してしまえばSwitchでない限りその性が覆ることはない。 抑制剤を飲むことも、本能が求める欲求も、窮屈だと俺は思う。決して抗えないそれは運命の相手さえも決めてしまうのか、とそんなことを考えた時期もあった。 Domの診断を受けた日から、俺の周りにはどこからともなくSubが現れた。男も女も関係なく、寂しさを紛らわすように肌を重ねて眠る。けれど欲求が完全に満たされたことなど一度だってなかった。俺を求めるその言葉も行動も何一つ信じられなくて。嘘を塗り固めてその場を凌ぐ。 満たされない欲求から生まれる特有の症状は今までも出たことがない。それは抑制剤が効きやすいこの身体のおかげだった。どんなに満たされなくとも薬さえ飲めば、関係なかった。 「──DomはSubに対して愛情を持って接する事が重要である。許容を超える威圧的なPlayはSubの精神状態に異常をもたらし、──」 あの男子生徒の寝顔が頭を()ぎる。彼はSubなのだろうか。そんなことをふと思った。 いつの間にか授業は終わり教室内は賑わいをみせる。どこからともなく広がるお弁当の匂いが鼻をくすぐった。
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