純白を纏う

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購買にいる人だかりにいるその人物を目にした瞬間、ドクン、と心臓が鳴った。思わず口元に乗った笑みが深まる。 ふわふわの金髪が淡く輝いて、他の男子生徒達よりも数cm高いその背はよく目立っていた。驚いたように目を丸くするその姿が何故か可愛く思えて、僅かに歩くペースが上がった気がした。 キラキラと光を取り込むその碧眼を見つめれば、自然と絡む、視線。 「あ、この前は良く眠れた?」 合わさった視線が嬉しくて思わず微笑んだ。周りのことなどもうどうでも良かった。けれど、目の前の男子生徒は俺を見つめながら一歩引いていく。その姿に不思議に思って首を傾げた。美しい碧眼がゆらゆらと揺れる。次の瞬間、目の前の男子生徒はその場から走り出した。 「ちょ、」 待って、と思わず手を伸ばす。けれど走り出した彼には届かなくて。なりふり構わず俺も走り出す。あの揺れる瞳が気になった。何かに怯えるように揺れるあの瞳が。ざわざわと騒ぐ生徒をよそに俺は彼を追った。 何故か上へと逃げる彼を追いかけて辿り着いた屋上。途中で彼が落としていったいちごのサンドイッチを扉の横の日陰へと置いた。 僅かに乱れた息を整えることなく、(はや)る心にその扉を開けた。 夏の、茹だるような暑さが身に染みる。照りつける日差しに首筋から汗が落ちた。パタン、と後ろ手で扉を閉める。その音に僅かに身を強張らせたように見えた目の前の彼は恐る恐るとこちらを振り返った。
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