純白を纏う

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 篭ったような臭いに顔をしかめつつ、素早く窓に手をかけ新鮮な空気を入れるため、窓を開いた。  生ぬるい風が頬を撫で、教室へと入り込む。埃っぽさがスッと流れるように消えていく。それに安堵の息をつく。 「ほら、座って」  そこら辺に乱雑に置かれた机と椅子を引っ張りだし、僅かに乗っていた埃を払うと、俺は真白に座るよう促す。  どこかソワソワと落ち着かないように目を伏せ、頬を染める真白に食べるよう促すと、小さく頷きサンドイッチをその口に頬張った。その姿を微笑ましく眺める。  ふと、真白がその動きを止めた。  すこし伏せていた視線を俺の方へ向けると不思議そうに見つめ、問いかける。 「?ご飯は?」  その問いかけに、どうしたものかと一瞬思考を巡らせる。食べていない、と素直に言えば真白は眉を下げ申し訳なさそうに言葉を詰まらせると容易に想像できた。  その姿が思い浮かんだ瞬間、俺の答えは完全に決まり、ニコリと笑みを浮かべ、はっきりと伝えた。 「食べたよ」  お腹など最早空いてない。おいしそうに食べる真白を眺めているだけで幸せだし、満たされる。だからもう、食べたとか食べてないとか自分的にはどうでもいいことだった。  真白の表情を曇らせない。それが俺の今のしたいこと。  そっか、と不完全燃焼のように小首を傾げながらも真白は頷いた。けれど何を思ったのか食べかけのサンドイッチを目の前に差し出し、コテンと首を傾げ問いかけを口にする。 「食べる?」 「ううん、食べな」 (……危ない)  ニコニコと真白を見つめながら、心を掻き乱さんと必死に耐える。沸き上がり溢れだそうとする熱情に気づいてしまえば、もう否定することなどできなかった。 (一目惚れとか、あるんだ)  トクトク、と脈打つ心臓は真白への気持ちに熱を乗せ、全身を巡っていく。じんわりと広がる熱と浮つく気持ちに乗せられ、気づけば口を開いていた。 「真白はSubだよね」  これは、ほぼ確信だった。ちょうど食べ終わった真白にそう言葉をかければ、その身体は一瞬こわばる。それを見て、しまったと思うと同時に、チャンスだとも思った。  真白の目には先程とは違い、怯えは見えず、ただどうしようと視線を彷徨わせるだけで拒絶の色は見えない。 (Dom()を拒絶しない、()を受け入れてくれるなら、どうか、どうか)   「俺のパートナーになってよ」 (俺を、君の世界に入れて)  指先は少し震えていた。それを悟られたくなくて、隠すように少し力を入れる。けれど例えどんなにかっこ悪かったとしても、真白と合わさる視線だけは逸らしたくなかった。    驚きに目を丸くした真白はまじまじと俺を見つめると、逸らされることのない視線に戸惑いゆらゆらと瞳を揺らす。  そして震える唇で言葉を発した。 「なん、で」 「真白がいい」 「でも、」 「俺は真白がいいんだよ」  理屈なんてない。例えあったとしても全部、この一言に集約されている。俺は真白がいい。ただ、それだけ。それ以外に理由なんてない。真綿で包むように甘やかして、その陰る表情に花を咲かせたい。
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