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ヨォ二枚目!
これまで遊郭のお話を書いてきました!
それまで物語の主となるのは「花魁」です、でも今回は主となるのは
「登楼客」なのです。
遊郭での一夜の"恋"はすべからずとてもあ〜ま〜い〜恋なのです。
ここ吉原ではその様なとてもあ〜ま〜い〜恋が"演出"されます。
よくよく考えたら・・そう冷静に成れば分かると思うのですけど。
全て花魁の"お仕事"だって・・ことが。
決して貴方に花魁が恋する事等は有りませんヨォ。
でもそこをお客様には一晩のあ〜ま〜い〜夢を見せるのが花魁なのです。
遊郭に上がったお客様はもう殆ど・・いえいえ全てが二枚目気取りで登楼するのです。
不男だろうが太っていようが大丈夫なのが吉原です。
御登楼のお客様はもう世間の嫌な事は全て吉原大門の外に捨てているのです。
仕事も!・・借金も!・・親の法事も!・・女房の事も!・・子供の事も!
全て忘れて、そして嫌な事は捨ててモテモテなのが遊郭なのです。
男性は有る一定の周期て"ウハウハ・ワクワクのムラムラで元気モリモリ"が来ますから・・それも致し方無いのですが・・そこを上手く"恋"にするのが花魁なのです。
九割九分九厘のお客様はこのあ〜ま〜い〜恋の花魁にやられてしまいます。
よって通い詰めて挙句には家財道具まで売って、それでも足りずに尚更借金を重ねて・・だから女房子供には愛想を尽かされて家庭崩壊にまで成るお客様も多かったとか!
ここに一人の遊び人がおります。
名前は"弥太郎"二十と壱歳で、日本橋は呉服屋の若旦那であります。
この若旦那は二枚目なのです。
それにも増してお金持ちと育ちの良さから品も有る方なのです。
♪♪♪でも〜遊び人です♪
その遊び方は普通とは違っております。
弥太郎の主戦場は"吉原遊廓"なのです。
黒星さん達を如何に堕とすか・・がぁ〜弥太郎の遊び方なのです。
壱に!
弥太郎は大見世には上がりません!
狙うは"中見店の看板"を主に狙っております。
格子部屋が在るのが中見店です。
弐に!
しかし最初からは、看板の花魁は狙いません、最初は三番手くらいでしょうか・・狙うのは!
参に!
弥太郎はとても品が良く物腰も柔らかく言葉使いも優しく温和にて、そして所作も・・もう女性的と言って良い殆どです。
四に!
金払いはとても良いのですが・・キチンとしております。
また決してお金を鷹揚に使ったりは致しません。
コレが弥太郎の遊び人心得なのです。
今晩も弥太郎が吉原大門を潜ってやって来ました。
先月から弥太郎が眼を付けた花魁は中見店の板頭"夕月花魁"です。
でも・・格子部屋横に居る夕月にはチラッと眼を見るだけです。
夕月花魁の横に座って居る"葉月花魁"に格子から声を掛けます!
「♪葉月さん、今日もお美しくて何よりです」
満面の笑みを弥太郎に向ける葉月花魁・・それを横眼で見ている夕月花魁は少しムッと致します。
本日の弥太郎はそのまま御登楼でした。
これを約ひと月もの、吉原通いでの弥太郎の恋の作戦であります。
さてさて、今日の弥太郎はいよいよ決戦の日です、これまでの準備は万端なのです。
なんの準備万端なのか・・それはこの、ひと月で横に座って居た"夕月花魁"がもう焦れて焦れてが弥太郎にも、わかる殆どなのです。
登楼した弥太郎に遣手が引付部屋に一人で入って来ました。
「若旦那大変申し訳ございません、葉月が・・ほれ、女の"お客様"がぁ〜ネッ、察しの良い若旦那ならおわかりでござんしょ!」
弥太郎の読みの通りで有ります。
「それでネェ、それで・・板頭の夕月花魁が今日のお相手で・・如何でござんすぇ?」
ここまでズバリ弥太郎の作戦通りであります。
「エエ・・そんな・・あの絶世の夕月さんを・・私なんかに!」等と心にも無い事を言って居る弥太郎なのです。
「マァ・・そんなぁ〜こう言ったら何ですけど・・夕月花魁の方からの申し出なんですよぉ〜・・若旦那!」
遣手はもう夕月花魁を大廊下に待たせて置いでで有ります。
擬かしい夕月花魁の方が遣手を押し退けて引付部屋に入って来ました。
「・・若旦那・・ワッチでは・・ダメでござんすかぇ?」夕月花魁の顔が・・もう少し怒っておいでであります。
「いえいえ、私なんぞにゃ、花魁は高嶺の花なれば・・!」
もう若旦那弥太郎は少し頬を染めて眼は節目ガチの顔付きになります。
「・・そんな、そんな・・ワッチは・・若旦那が憎くて憎くて・・ホンニ・・まっことに・・」そんな夕月の言葉にはとても刹那な刻がありありとであります。
「私を・・夕月花魁は憎くい・・そんな・・私の方こそ・・想うことは・・いつも夕月花魁の事ばかり・・でもでも、私なんか・・夕月花魁はきっと・・きっと相手には・・!!」
その言葉を夕月花魁に言って弥太郎は夕月花魁の『眼』を刹那なく見つめておりました。
『ホンニ、ホンニ・・その言葉は本心なのぉかぇ?〜』
夕月花魁の頬に薄っすらと紅がおります。
弥太郎は夕月の眼を見詰めて・・ソット眼を逸らします。
その仕草の可愛い事ったら、夕月の心が震えております。
引付部屋から寝部屋の襖絵が閉じられました。
夕月花魁と弥太郎はお互い眼を見詰めておいでです。
「・・わか・・旦那・・ワッチはぁ〜」
弥太郎はそんな夕月の手を取ります。
「夕月さん・・今日は"初回"ならば・・私と楽しいお話しでも・・しませんか?・・そうだ、夕月さん・・もし・・もし宜しければ夕月さんのお膝を貸してくだしゃんせ!」
弥太郎のとても・・あ〜ま〜くてガツガツしてない様は他のいかにもガツガツ系とは違うお客様なのです。
夕月の膝枕での弥太郎は世間の面白話しをしてます、粋で、乙な話しです。
ときには、クスクスと夕月が笑い、時には心がホッコリするお話しを弥太郎は話しております。
決して花魁の負になる話し等等は致しません。
生い立ちとか、なんで廓に居るとか・・そんな野暮な話しは決して致しません。
夜も更けてまいりました。
吉原大門も閉められます。
大引けの刻と相成りましょう。
夕月花魁は寝間の絹の布団を捲り・・着物をスルッと脱ぎ艶っぽい長襦袢で絹の布団に入ります。
「・・若旦那・・!」
「夕月さん・・今日はいかがでしょうか、このまま・・ゆっくり・・そうですね私の腕の中でゆっくりとおやすみくださいなぁ〜ええ私は何もしませんから、夕月さんの美しい寝顔が私にはこれ一番ですから、夕月さんとネェ」
夕月花魁は花魁ですから、お仕事で女の武器を、この板頭を袖にした若旦那をゾッコンの惚の字にする予定だったのですけど・・逆に若旦那にしっかり心を奪われております・・って事を未だ感じておりません、それは夕月花魁が若旦那を可愛くて愛しくて堪らない感じになっておられます。
弥太郎は夕月を優しくソット抱きしめております。
夕月が少しでも弥太郎をその気にさせようとしても、弥太郎はニコニコして夕月を尚更しっかり抱きしめておりました。
そんな優しい事をされた事は今まで有りませんって言うか、そもそも遊郭に来るお客様は"花魁とのそれが目当て"で来ますから!
夕月は日頃の疲れか・・そのまま弥太郎の腕の中で寝入ってしまいます。
朝七半
弥太郎は寝入って居る夕月を起こさないようにソット布団から出て、スラスラと手紙に一両を添えて枕元に置きました。
『夕月さん、昨夜はとても嬉しく楽しい刻を頂きありがたき事、こんな端金で失礼します、紋ノ日にはお菓子でも買ってくださいませ、私はまだ修行の身慣れば、またいつかお逢いできる日を心に留めて、せめても六段目にならずように、ごめん被ります・・弥太郎』
起きた夕月花魁は・・弥太郎の優しい手紙を読んで・・!
それからの夕月花魁は心此処に在らずにて、想いは弥太郎の事ばかりなりけり。
わざと焦らして吉原に行かないで居る弥太郎ですけど、行ったら御登楼料もただ同然ですけど・・でも弥太郎はやはり他の生け簀がないガツガツ系とは違いますから・・だって花魁から身体を託して来るまで何もしません・・もちろんキチンとお金を払いますし、朝には夕月にはやはり一両を置いて帰ります。
ここまで来ると!・・夕月花魁の心は弥太郎のことでいっぱいでした。
『もう弥太郎はもちろん夕月花魁の"間夫"なのです』
甘い夢を魅せて貢がせるのが花魁なのですが・・この二枚目若旦那弥太郎の粋な遊び方には百戦錬磨の花魁も心を奪われておりました。
クソ〜色男メッ・・😑😑😑二枚目はモテるのに・・綺麗な遊び方だと・・なんだよ・・まったくヨォ!😡😡
アッ・・オッチャンはもうガツガツ系そのものっす!😅
ーおわりー
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