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ひゅひゅん、と音がして、ぱちっと脛で弾けた。
一瞬後にじわりと熱が広がる。
「……痛いなあ」
僕はしゃがんで脛をさする。初めはこうすることで痛みが多少なりとも和らいでいたが、もう何度も同じ場所を痛めつけているのでもはやその効果は無いに等しい。
午後四時過ぎ。空の色が薄まってくる頃、この公園には誰もいなくなる。僕はその公園の真ん中でひとりしゃがんでいた。
痛いしもう帰ろうかな、と思い始めていた時。
「お、発見」
不意に聞こえた声に顔を向けると、一羽のカラスが地面に降り立った。
しかしそのカラスは僕の知っているものとは少し違う。
カラスというのは夜みたいに真っ黒な色をしているはずなのに、何故だかそのカラスは少し白みがかかったグレーだった。
「おーこりゃあいい白だ」
先程と同じ声がして、黒い嘴がぱくぱくと動く。やはりさっきの声の主もあのカラスなのだろう。あれ、カラスって喋るんだっけ?
僕は少しだけ身を固めてカラスの動向を見守ることにした。僕はまだ小学生だけれど、あのカラスが普通じゃないことは流石にわかる。
カラスはそんな僕のことなど気にも留めずに小さな歩幅で歩き、地面に落ちていた一枚の白い羽根を器用に嘴で摘まみ上げると、そのまま自分の左翼に差し込んだ。
「よし」
何がよしなのか。
心の中でツッコんだはずが届いてしまったのか、カラスの頭がぐるんとこちらを向く。
「よお少年」
カラスは真っ直ぐにこちらを見て言った。僕以外に公園に人はいない。間違いなく僕のことだ。
カラスは小さく跳ぶように歩いて、僕の目の前で止まる。
そして、その嘴を開閉した。
「この辺で白い羽根見なかった?」
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