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翌朝鏡を見て、予想はしていたが驚いた。ひどい顔だった。夜眠れずに寝不足と泣き腫らした目が相まって別人のようだった。
「誰だ、あんたは?」
鏡に語りかけても、何の解決もしない。いつもよりしっかりメイクをして、食欲がないから朝食も取らず家を出た。
まだ梅雨には入っていないが、うっとうしいぐらいに空は雲が厚く覆っており、憂鬱な気持ちに拍車をかける。
「切り替え、切り替え」
駅までの道のり、そう独り言をつぶやきながら歩いた。人様の幸せを祝う結婚式場のスタッフが憂鬱では話にならない。
でもわかってはいるが、気持ちをすぐに切り替えられるほど、私は器用ではない。
「がんばれ、がんばれ」
つぶやきながら、軽くパチパチとほっぺたを叩く。
するといきなり、フェンスの隙間から犬に吠えられた。
「うおっ!」
驚いて声が出る。本当は可愛く「きゃー」と悲鳴を上げたい所だが、現実は驚いたらそんな声は出ない。こういう所が振られる原因なのかな?
こいつ、そういえば昨晩も吠えやがった犬だ。
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