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第6話
あの惨劇の直後、郷里の実家から訃報を聞くより早く、テレビのニュースで事件を知り、納乃宮はガクゼンとした。
ずっと憧れ続けていた年上の幼なじみへの哀悼と、あまりに身勝手で残忍な凶行への怒りで、彼の心は張り裂けそうだった。
しかし、意識のない瀕死の状態で犯人が捕縛されると、行き場をなくした納乃宮の怒りと恨みは、惨劇の現場を「怪奇スポット」なんぞと称しては、さもオドロオドロしげな尾鰭をつけてハヤシたてる不謹慎な連中に向かっていった。
とりわけ、なんの罪もない女性が、いわれのない不条理な暴力に一方的に痛めつけられ、生きながらに灼熱の炎で焼き殺された悲劇の現場を、「肝試し」だなどとヒヤカシ半分に蹂躙していく連中の存在が、納乃宮には耐えがたかった。
そんな連中どもによって、根も葉もない因縁を面白半分に付け足されていくたびに、なんの罪もない若い女性の味わった壮絶な悲しみと苦痛が、チマタにはびこる胡乱な怪談のひとつとして繰り返し拡散されていくことが、彼をこらえきれない憎悪で満たしていった。
由緒ただしい神社の末裔とはいえ、神も仏も幽霊も、あの世とやらも、まるで信じてこなかった納乃宮だった。
だが、今は信じている。
きっと彼女は、あらゆる俗世の悩み苦しみから解き放たれ、永遠の平穏が約束された天上の世界で幸せに過ごしているに違いない。
はかなげな笑顔の似つかわしい、本当に素晴らしく優しい女性だったのだから。
いかに筆舌に尽くしがたい恐怖と苦痛と絶望の中で命を絶たれたとて、おぞましい怨霊に身をやつし、手あたりしだいにヒトを呪うなんて、そんなことは断じてありえない。彼女に限って、絶対にありえないのだ。
よりにもよって、半死半生だった殺人犯が、ちょうど凶行の日からピッタリ6年目に病床で死を遂げたために、それが被害女性の怨念のシワザだなどと取り沙汰されることとなると、ついに、納乃宮の自制心のタガが吹き飛んだ。
だから、美しかったあの女性を、おぞましい復讐の怨霊だと吹聴した3人のインチキ霊能者を、納乃宮は、どうしても、殺さずにはいられなかったのだ。
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