22時12分、僕らの希望

3/8
前へ
/8ページ
次へ
「今すぐ来てくれないと、息苦しくてもう無理かも」  君が屋台で掬った金魚みたいなことを言うから、僕は何度ものぞみに乗り、夜の名古屋―東京間を移動した。  エンドラインは21時35分。それが僕の会社から、新幹線に乗ることができる、ぎりぎりの時間。  離れ離れになって二週間が経った日、僕は走って、息を切らしながら切符を買い、新幹線に飛び乗った。それがはじまりだった。  のぞみ64号が僕らの希望の名前だと知ったのは、三回目に乗ったときだ。    僕はまだひと月も先の君の誕生日プレゼントを握りしめ、泣きそうになりながらホームで新幹線の扉が開くのを待った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加