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「ふっふっふ、とっておきのプレゼントだよ。ね、志保?」
え、また私なの?
いや、今の私が持っているものなんて……。
あっ、そういうことか。
梓だって同じものを持ってきてるはずだもんね。
「なになに、すごく楽しみ」
「まぁまぁ。とりあえず座ろう」
そう言った梓が受付の近くのテーブルに座ったので、私が梓の向かいに、先生はその間に腰を下ろした。
三人でいるときのいつもの位置関係だ。
先生は座ったままにこにこしているけど、なんとなく、私たちが今から何を出すのか、先生にはお見通しな気がした。
「じゃーん! これだよ!」
梓が勢いよく取り出したのに対して、私はそっと控えめにテーブルに置いた。
「なにこれ?」
「見てわかんないの? 春休みの宿題だよ」
「あっ、そういうこと……」
「先生、私たちと一緒に勉強したいでしょ? これなんて、最高のプレゼントだよね!」
物は言いようとは、まさにこのこと。
先生は予想が外れたのか、やれやれって感じの表情を見せてから、すぐにいつもの先生の顔になって、梓の教科書を開いた。
「で、どれがわからないの?」
「いっぱいあるからそうあせらないで。っていうか、宿題多すぎるんだけど!」
梓は高校の内容を予習するのがメインみたいだけど、私は中学の復習がメインだから、それほど困ってはいない。
だけど、答えはあっても解説がほとんどなくて、先生のプリントに慣れてしまった私にはなかなかきつかった。
だから私も、先生に聞きたいことはたくさんある。
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