3月28日(土)・志保

6/7
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/383ページ
「ふっふっふ、とっておきのプレゼントだよ。ね、志保?」  え、また私なの?  いや、今の私が持っているものなんて……。  あっ、そういうことか。  梓だって同じものを持ってきてるはずだもんね。 「なになに、すごく楽しみ」 「まぁまぁ。とりあえず座ろう」  そう言った梓が受付の近くのテーブルに座ったので、私が梓の向かいに、先生はその間に腰を下ろした。  三人でいるときのいつもの位置関係だ。  先生は座ったままにこにこしているけど、なんとなく、私たちが今から何を出すのか、先生にはお見通しな気がした。 「じゃーん! これだよ!」  梓が勢いよく取り出したのに対して、私はそっと控えめにテーブルに置いた。 「なにこれ?」 「見てわかんないの? 春休みの宿題だよ」 「あっ、そういうこと……」 「先生、私たちと一緒に勉強したいでしょ? これなんて、最高のプレゼントだよね!」  物は言いようとは、まさにこのこと。  先生は予想が外れたのか、やれやれって感じの表情を見せてから、すぐにいつもの先生の顔になって、梓の教科書を開いた。 「で、どれがわからないの?」 「いっぱいあるからそうあせらないで。っていうか、宿題多すぎるんだけど!」  梓は高校の内容を予習するのがメインみたいだけど、私は中学の復習がメインだから、それほど困ってはいない。  だけど、答えはあっても解説がほとんどなくて、先生のプリントに慣れてしまった私にはなかなかきつかった。  だから私も、先生に聞きたいことはたくさんある。
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!