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10月26日(土)・志保
「この数字ですと、集団コースでは少し厳しいですね」
目の前に広げられた答案と、突きつけられた現実。
私は別にいいけど、隣にいるお母さんの哀しそうな顔を見るのがつらかった。
「個別コースなら、お願いできますか」
何も悪いことはしていないはずなのに、お母さんは何度も謝ってから、そう言った。
「そうですね。抑えの学校を必ず受けてくれると言うのであれば、お預かりすることはできます」
なにそれ。
それって、第一志望の学校には受からないって言ってるようなもんじゃん。
私がどんなにバカだって、それくらいのことはわかる。
「わかりました。必ず探して受験するようにしますので、よろしくお願いします」
お母さんは何度も頭を下げて、本当に申し訳なさそうな声でそう言った。
「それでは、入塾の手続きに移ってもよろしいですか?」
「はい。志保、いいよね?」
このタイミングでそんなこと聞かれても、断れるわけないじゃん。
そう思っていたはずなのに、私は無意識のうちにこんな返事をしていた。
「……いいよ、やっぱり。どうせ私には無理だって」
私の言葉を受けて、答案を回収していたおそらく塾長と思われる先生が動きを止めた。
少しして、お母さんが口を開く。
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