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「ほら、志保」
「え、私? いや、ごめん、全然話についていけないんだけど」
「えー? 前に話したじゃん。ほら、スマホ出して」
言われるがまま、私は自分のスマホを取り出した。
まだうまく操作はできなくて、入学までにいろいろ教わっているところだ。
「ほら、先生。そっちに立って。あぁ、外のほうがいいかな」
ここまできてやっと、梓が何をしようとしているのかわかった。
私のスマホを使って、写真を撮ろうとしているんだね。
私はスマホを買ってもらってすぐに、梓から卒塾パーティーのときの写真をもらった。
高校の制服で写真を撮ろうって話したのはそのときだから、もう結構前の話だよ。
梓に連れられて塾の外に出た私たちは、卒塾の日と同じように、ツーショットを撮った。
格好が変わっただけなのに、全然違って見えた。
高校生ってすごい。
「次は先生だよ」
「え? どういうこと?」
「だから、プレゼント。先生のスマホで、私たちの女子高生バージョンも撮っていいよ」
「あっ、そういうこと。じゃあ、ちょっと待ってね」
「先生、時間は大丈夫なの? すぐに次の授業じゃないの?」
「幸い次の時間は空きなの。いいタイミングに来てくれたよ」
私の質問にそう答えた先生は、軽い足取りで建物の中に入っていった。
タイミングが悪くなかったと聞いて、私はすごく安心した。
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