3月28日(土)・志保

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「よし、じゃあ高校講座を始めるとしますか」 「待ってました! やー、ほんとに助かるよ。ね、志保」  満面の笑みでそう言った梓に、私はひとこと「うん」とだけ返して、ふっと先生の顔を見た。  先生も普段通りの笑顔を見せてくれて、やっぱり嬉しそうだった。  私たちに勉強を教えることが、先生にとってもしたいことでありますように。  そう思った私は、本格的に勉強を始める前に、こう言った。  いや、こう告げた。 「先生。私たちはきっと、これからもこうしていっぱい質問に来るよ」 「うん。それは全然かまわないけど……」  先生は少しだけ困ったような表情でそう言った。  私が何を言おうとしているのか、予想できないでいるみたいだった。 「でも、振り返るんじゃないよ。前を見た先に、ここがあるの」  振り返らずに進んで。  先生はそう言った。  だから私は言われた通りにするよ。  振り返るんじゃなくて、楽しい高校生活を前向きに過ごすために、ここに来るんだ。  私たちはこれからも、先生の力を借りながら、先生と一緒に前に進むんだ。  先生が顔をほころばせながら「わかった」って言ってくれたとき、私は今日ここに来た最大の目的を果たすことができたと思った。  今日までありがとう。  そして、これからもよろしく。  そんな気持ちを胸に抱いて、私は梓に割り込む形で質問をするのでした。
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