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この塾は高校受験に向けた中学生をメインに集めていて、小学生に関しては受験をしないクラスが一つあるだけで、規模は小さいながらも、地元に根付いた個人塾だ。
基本的には集団授業がメインで、個別指導もおまけのように構えてはいるが、毎年数人いる程度だ。
そして僕は、ほとんど個別の授業をしたことがない。
「こちらの生徒さんです」
そう言って入塾テストを見せてくれたのは、受付の樋口さんだ。
週三日、授業以外の事務仕事を手伝ってくれているパートの人で、とても親切で気が回る、なくてはならない存在だ。
「えっ、中三ですか」
もらった答案を見て、点数よりも学年に驚いた。こんな時期にやってくる中三生も珍しい。
「数学がなかなか、パンチが効いてるでしょ」
苦笑いを浮かべながら塾長は言った。
ちなみに塾長は英語の先生で、それ以外の科目に関してはまったく手を付けようとしない。
「この子が、月曜に来るんですか」
「そう。五時半から体験。先生の力で入塾させてよ」
完全に他人事だ。っていうか、僕の都合によらず体験に来ることは確定しているんじゃないか。
まったく、人使いが荒いというか、いい加減な人だ。憎めない人だとは思うけれど、もうちょっと配慮は欲しい。
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