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③
まさか、そんな、本当に?と胸がドキドキと煩い。
震える手で箱を開けるとそこには――キラリと光る2つの小さな輪っか――――指輪が収められていて一緒にあったプレートには、
『俺の一生をあげるから楽助の一生を下さい。誰よりも愛してる。 -千雪-』
と書かれていて、嬉しくて心臓が止まってしまうかと思った。
「――っ……」
「今年は俺たちが恋人になって初めてのラクの誕生日だから特別な物を贈ろうと思ったんだ。俺たちの絆というか……俺はラクのモノで、ラクは俺のモノだっていう証に指輪がいいと思って。ラクはモテるからさ……少し他を牽制する意味もあった……。折角だからいいやつ贈りたくて……それでバイト探してたんだけど俺のこの怒り顔のせいでなかなか決まらなくて困ってたらあの先輩が声かけてくれてさ。最初は断ろうかと思ったんだけど、先輩ラクの事褒めてくれたんだ。俺みたいなじゃじゃ馬? 乗りこなしててスゲーって。意味は分からないけどオレのラクが褒められて、俺嬉しくて」
そう言ってにひっと笑う千雪。
千雪の泣いて赤くなってしまった目元を親指でそっと優しく擦る。
「――ごめん……」
さっきまで感じていた不安や苛立ちがどこかへ消えていき、代わりに温かな物で満たされた。
付き合いだしてからもどこか不安だった。
騙し打ちのようなあんな告白。
こんなオレで本当にいいのかなって思っていた。
自分に自信がなかったんだ。
千雪より小さな自分。守りたいのに守れないかもしれない。
いつか自分よりもっと千雪に相応しい人が現れるかもしれないっていつも怖かった。
だけど、オレが千雪を想うように千雪もオレの事を想ってくれていて、オレたちの事を真剣に考えてくれていた。
オレなんかよりもっとずっと覚悟をしていた。
情けない事にオレは目の前の事でいっぱいいっぱいだったというのに…。
「俺、ラクがいてくれたら何でもできる。ラクの為なら何だってできるんだ。だけどそれは、ラクがいなくなったら何もできないって事だから。だからもう俺から……離れて行かないで…?」
それはオレが願った事だった。願い続けていた事だった。
オレはバカだ。大バカだ。千雪の事を信じないなんて。
オレは千雪を抱きしめ許しを乞うた。
「ごめん。本当にごめん……。オレ、オレ……本当に千雪が好きだよ。もう二度としないから……許して……?」
「ん。許す。俺もラクが好き。あい……愛してる……」
そう言って千雪から再びもたらされた唇へのキス。
だけど目を瞑って勢いよくキスしたものだから、ガツンと歯が当たってしまい地味に痛い。だけどそれ以上に愛おしい。
キスの失敗につり目のはずの千雪の目が情けなくへにょりと垂れた。
んとに……可愛すぎだろっ。
怒り顔で少しおバカな可愛くて恰好いいオレのお姫さま。
幼馴染みで恋人で、世界で一番大切で大事な愛しい人。
お互いの指に指輪を嵌めると千雪は本当に嬉しそうに笑った。
オレも同じように笑う。
ああ、千雪の事が本当に好きで好きで、好きすぎて……幸せだ。
今度はオレから最愛の人のその唇にそっとキスを贈った。
-終-
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