怪装名人

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 そんなある日、怪装名人に怯えながらも一粒の大きなダイアモンドを購入して満足げに歩く1人の伯爵がおりました。名前は、カルディエゴ伯爵といいました。カルディエゴ伯爵は莫大な財産の持ち主であり、宝石を集めるのが好きという贅沢な趣味をもっていました。でっぷりと太ったお腹、鼻の下のちょび髭、顔のパーツをきゅっと縮めたような顔をしていました。カルディエゴ伯爵は楽しいことが大好きで、大富豪の中でもパーティーをたくさん開いていました。宝石集めが趣味の人と出会えば、ずっと笑って喋る、明るい性格でした。怪装名人の噂話が絶たない日々にびくびくしていましたが、新しい宝石に出会い、久々に清々しい気持ちになっていました。 「このダイアモンドの輝きは天下一品じゃ。また屋敷に戻ってからショーケースに入れてじっくり鑑賞するとしようかな。」  カルディエゴ伯爵はトランクの中に入っているダイアモンドを見て、にんまりしました。 「ここ最近、あまりいい噂も聞きませんので、十分にお気を付け下さいませ。」  カルディエゴ伯爵の召使いのドトルテという弱々しい男は辺りを見回して、ひそひそと言いました。 「なあに、あとは帰るだけじゃ。汽車の中は走る檻のようなものだ。心配するな、なにも起きまい。」  カルディエゴ伯爵はドトルテを励ますように言いました。
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