第1ラウンド VS旭

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***  夏休みが終わり学校が始まると、真昼とはますます気まずくなった。  あたしと出くわすと真昼はあからさまに目をそらして、あたしが追いかけてくるかのように逃げ出すのだ。まるで夏休み前と立場が逆転してしまったみたいだった。  真昼に絡まれなくなって嬉しいはずなのにちょっぴりモヤモヤするのは、低気圧が近づいているせいだろうか。  九月も半ばをすぎて天候が不安定になってきた。天気予報は毎日台風の進路の話題で持ちきりだった。なんでも、夕方から夜にかけて台風が本州に上陸するらしい。  史上何番目とかいう規模の大型台風らしく、急遽学校は二限で終わった。台風が突然Uターンしない限り明日も休校になる予定だという。  あたしは事前に旭さんの許可を得て、今日の仕事の時間を前倒ししてもらっていた。早く家に帰って台風に備えて自転車をしまったり養生テープで窓を補強したり、近所の一人暮らしのおばあちゃんの安否を確認したりしなきゃいけないからだ。  真鍋家で一通りの仕事を終えて帰り支度をしていたところ、スマホが震えて電話の着信を知らせた。お父さんだろうと思い、あたしはろくに相手も見ずに出る。 「もしもし?」 『あの、ピィちゃん』 「旭さん!?」  家族用の声で出てしまったあたしは慌てて咳払いして誤魔化した。
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