第1ラウンド VS旭

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 あたしは慌てて検索し直してみた。  確かに、電車で行けば五時間かかるが片道四千円前後の出費ですむ。これならギリギリ往復でも足りそうだ。  あたしは勢いよく顔を上げて真昼を見つめた。真昼がたじろぐ。 「ありがと! それで行ってみる!」  リビングを飛び出し、ローファーをつっかけて真鍋家を出る。  アスファルトの地面につま先を打ちつけてローファーをならしていると、真昼が玄関のドアに鍵をかけているのが見えた。  真昼は一段高くなっている玄関前からあたしを見下ろした。湿った風が真昼のふわふわの黒髪をかきまわし、ついでにヤツの高らかな宣言をあたしのもとまで運んできた。 「俺も行く」 「結構です」  真昼にてのひらを向けると、ヤツはムキになってあたしの隣に無理やり並んだ。 「俺が、俺の金で、俺の勝手で行くんだ。別にピィ子と一緒に行くわけじゃない」  真昼は庭に停めた自転車には見向きもせず坂道にむかって歩き出す。  一緒に行くわけじゃないのならあたしのことなど置いて自転車でさっさと行けばいいのに。わけわからないやつ。  あたしはそのまっすぐのびる背中にむかって大声を投げつけた。 「好きにすれば!」
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