第1ラウンド VS旭

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 ネクタイを届けた旨を旭さんに連絡し、再びバスに乗って駅に戻る。  今から電車に乗れば夜遅くには東京に到着する予定だ。お父さんには「バイトで遅くなった」と言い訳することにしよう。あながち間違ってはいない。  しかし、駅の電光掲示板の案内を見て、あたしは愕然とした。 「電車、止まってる……」  台風上陸の影響のため、今日の夕方から明日の午前中にかけて計画運休なのだそうだ。電車も新幹線もすでに止まってしまっており、高速バスは予約の締切時間を過ぎていた。タクシーで帰るほどのお金もない。  つまり、東京へ帰る手段がなかった。  あたしってばどうしてこんなにバカなんだ。  頭を抱えてももう遅い。  旭さんに勝ってほしい、勝負ネクタイを届けてあげたいという一心でここまで来てしまい、台風で電車が運休するかもしれないことをちっとも考えていなかった。 「真昼、あんたどうするの」  あたしは真昼がついてきているものと思ってそう声をかけたが、返答はなかった。  あたりを見回してもヤツはどこにもいない。手段を見つけてさっさと帰ってしまったのか、あるいは今晩泊まるところを見つけたのか。いずれにしてもあたしと行動をともにする気はなさそうだ。
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