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真昼がいないとわかった途端に、急に心細くなってきた。
あたしと真昼は今気まずい状態にあるし、真昼はたまたま同じ方向に向かう他人みたいに勝手についてきただけだ。ヤツがどうしようとあたしには関係ない。
それでも、いないとわかるとまるであたしのほうが置き去りにされたような気持ちになる。変な話だ。
運休を知らせるアナウンスが飛び交う駅の構内に立ちつくし、あたしはブラウスのお腹のあたりをくしゃっと掴む。
最悪の場合、公園で野宿するしかない。覚悟を決めているとふいに頬に温かいものが触れた。
「ふぎゃっ!」
たたらを踏んで振り返る。真昼が小さいペットボトルのほうじ茶を二本持って立っていた。そのうちの一本をあたしに向かって放り投げてくる。
「痴漢されたみたいに叫ぶなよ。せっかく買ってきてやったのに」
「急にいなくなるから、びっくり、したでしょ……」
言い返す言葉に力が入らない。ほうじ茶のペットボトルは熱いくらいで、指が温められて腫れるようにじんじんとする。
知らないうちにこんなにも手が冷えていた。こんなにも不安になっていたのだ。
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