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「このへんのホテルはほぼ満室だ。ダブルルームがひとつだけあいてたから、そこでいいよな?」
真昼が片手でスマホをいじりながら尋ねてくる。
いつの間にホテルを探していたのだろう。呆然と突っ立っていたことにばつの悪い思いになり、あたしはそっぽを向いた。
「あんた泊まれば。あたしは別に野宿でもいいし」
「緊急事態だろ。それともそんなに俺と同じ部屋が嫌かよ」
「自分のこと好きって言ってる男子と同じ部屋に泊まれるわけないでしょ」
真昼はふんっと荒い鼻息を吐くと、問答無用であたしのリュックサックを引っ張った。
「安心しろ、俺は今、お前のことなんか大っ嫌いだ」
真昼があまりにも強情なのでこちらが折れるしかなかった。
真昼が見つけてきたのは、素泊まりの格安ホテルだった。大手ホテル予約サイトに登録していなかったために、偶然空き部屋があったようだ。素泊まりだから食事は出ないものの、各部屋にはユニットバスがついているという。
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