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真昼にまともな言い訳なんか考えられるとはとうてい思えない。
あたしはスマホを取り返そうと手を伸ばすが真昼のほうが反射神経がよく、いともたやすくよけられた。
「もしもし、突然すみません。ことりさんのクラスメートの真鍋と申します。実は――」
真昼は理路整然とこれまでの経緯を説明し始めた。しかも、バカ正直に。
娘が今静岡に来ていて、しかも台風で帰れなくなってクラスメートの男子と泊まるしかないと聞いたお父さんは、初めは戸惑っていた。しかし、嘘やごまかしや言い訳がひとつもない真昼の真摯な受け答えに、最終的にはヤツを信用したらしかった。
最後にあたしにかわると、お父さんは呆れたように笑っていた。
「心配だけど、真鍋くんがいい人そうだからとりあえず外泊を許します。変なことはしないように。あと養生テープはお父さんが買ったから」
「うん、わかった」
電話を切ると、真昼はこちらに背を向けてスマホを操作して誰かにメッセージを打っているところだった。夕仁くんかもしれない。
「真昼、あの、えっと、ありがと」
その背中に向かって声をかけると、真昼はちらりとこちらを一瞥しただけで何も言わずにホテルの中に入っていった。
あいつ、自己中で横暴だけど意外といいところがある、の、かもしれない。
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