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「あたしは関係ないでしょ。あくまでたとえの話だってば」
「でも俺にはほどほどなんてできない。この一ヶ月間、ピィ子なんか嫌いだって自分に言い聞かせてきたのに結局こんなところまでついてきちまった。俺、やっぱりピィ子が好きだ」
バスルームの照明が一度点滅すると、真昼の瞳の中で流れ星のように光が走っていった。好きだという言葉がずんと響いて胸につっかえる。
静岡のホテルのバスルームという非日常が背中を押してくれて、あたしはやっとのことで言葉を絞り出した。
「ありがとう。でもあたしはあんたの気持ちには応えられないよ。ごめんね」
「そっか。うん。わかった」
真昼はうつむいて何度も何度も頷いた。あたしもその場で深く頭を下げた。
「でもインターハイの日のことはかっこ悪くなんかなかった。ひとりで何点も決めてたじゃん。あんたにはあんたの事情があったのもわかる。出しゃばって偉そうなこと言ってごめん」
あたしは真剣だったのだが、真昼はふんっと笑った。
何その笑い方……?
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