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いつものように登校する途中、校門をすぎたあたりで、あたしは百八十センチ超えの大男六人にいきなり囲まれた。
朝練帰りなのかみんな学校指定のあずき色ジャージを着ており、背中には「バレーボール部」というプリントが入ったエナメルバッグを背負っている。
彼らはかごめかごめをするようにあたしを取り囲むと、いっせいに喋りだした。
『高橋さんだよね?』
『もしかして真鍋に毒でも盛った?』
『真鍋って中の人変わったの?』
『真鍋の兄ちゃんかっこよくね?』
『インターハイ来てた?』
『真鍋の母ちゃん怖いってマジ?』
『あたしは聖徳太子じゃないっつーの!』
六人は後ずさって、喋りだしたときと同じようにいっせいに黙りこんだ。しばし目配せしあっていたが、やがて、一際背の高い男子が代表して一歩前に出た。
『試合でミスした俺に、真鍋がなんて言ったと思う?』
あたしの頭の中に浮かんできたのは、インターハイの日の真昼だった。
『お前なんか辞めちまえ、下手くそは嫌いだ、とか?』
『だと思うだろ?』
『違うの?』
『それがさ、ドンマイ、次切り替えていこう、って言ったんだよ』
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