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「それでいいよね高橋さん?」
「あ、はい」
教壇のほうから文化祭実行委員の男子の声が飛んできて、あたしは咄嗟に頷いた。
その途端に、教室のあちこちからホッとしたような安堵のため息が聞こえてくる。
あたしに撤回をする暇を与えないとばかりに、書記がすさまじい勢いで何やら書き始めた。チョークが黒板にぶつかる音が響きわたる。
今は教室でのロングホームルームの時間。三週間後に控えた文化祭の出し物について話し合っている最中だ。
文化祭のクラス発表で何をやるのかは事前に開かれた実行委員会議で決定されていた。うちのクラスはくじ引きに負け、最も不人気な体育館での演劇をやることになってしまったのだそうだ。
あたしは大道具とか照明とかそのへんの裏方をやろうと思っていたので、配役決めは自分には関係ないと思ってボーッとしていた。
慌てて黒板に目を走らせる。
どうやら演目は「人魚姫」のようで、脚本は演劇部の子が担当するらしい。メインの配役は大方決まっているようだ。
王子が恋する隣国の姫役、あやちゃん。
メインの王子様、真昼。
そしてその隣、主役の人魚姫役の欄には「高橋ことり」と書かれていた。
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