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「はあ~~~~!?」
あたしは抗議の叫び声をあげて立ち上がった。椅子が床をこする音がけたたましく響き、教室中の視線があたしに集まる。
「なんでそんなことになったの?」
「高橋さんの配役は、王子役の真鍋くんのご指名です」
真昼の席を振り返る。ヤツは椅子の上で体育座りをするようにお行儀悪く座り、あたしと目が合うと勝利のVサインを掲げてきた。
謀ったな、真鍋真昼!
あたしはぎりぎりと奥歯を噛みしめる。演劇なんかやりたがらないであろう真昼が王子様役の時点でおかしいと思ったのだ。
「あんた、静岡であたしの返事に『うんわかった』って言ったでしょ」
「あいにく、俺様の辞書に『諦める』って言葉はないんだよ」
「とんだ落丁じゃない!」
真昼と話していてもらちがあかない。あたしは教壇に立つ実行委員に向かって手を挙げる。
「演劇部とか放送部とか、もっと演劇に向いてる人で候補者いなかったんですか?」
あたしの提言に実行委員が演劇部のメガネの女の子に話を振った。
みんなの視線が彼女にうつると、彼女は背中を丸めて激しく拒否した。首を横に振る勢いが強すぎて、ふたつしばりの毛先が遠心力で暴れる。
「わたし脚本やりますし、真鍋くんの指名は高橋さんですし、それに真鍋くんの相手役なんかやったら学校中の女子を敵にまわしちゃいます……!」
最後の部分が本音なのだろう。
見れば、クラスの女子みんなが神妙な顔で頷いている。
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