123人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あの、ことりちゃん」
控えめに挙手したのは、少し離れた廊下側の席、すでに隣国の姫役に決まっていたあやちゃんだ。
あやちゃんは生真面目に実行委員に指名されてから立ち上がり、あたしに向き直った。
「もしことりちゃんがやりたくないなら、わたしでよければ役をかわろうか?」
その手は小刻みに震えている。あたしは心優しいあやちゃんにそんなことを言わせてしまう自分が情けなくなった。
元はといえば話し合いのときにボーッとしていたあたしが悪いのだ。その結果を誰かになすりつけようなんていうのは間違っている。これはあたしが自分の力で解決すべきだろう。
あたしはあやちゃんのもとまで歩いていってその手をぎゅっと握る。
「いいよ。そうなったらあやちゃんが嫌がらせされちゃう。あたしがやるよ」
「じゃあ真鍋くんの相手役でかまいませんか、高橋さん」
「いいです。ただし、真昼が人魚姫であたしが王子様役なら」
「はあ~~~~!?」
今度は真昼が立ち上がる番だった。
最初のコメントを投稿しよう!