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「絶対に嫌だ。どうして俺が女装なんかしなきゃならないんだよ」
「じゃああたしもやらない」
「うぐっ」
あたしはしてやったりとほくそ笑む。さすがに真昼もこの条件をのむことはないだろう。
真昼の相手役は誰がやっても必ず不幸になる。それならその不幸の元凶を役からおろしてしまえばいい。真昼は提示された条件のひどさに屈辱的な表情を浮かべ、こぶしを震わせていた。
あたしはスカートの裾を翻して優雅に自分の席に戻る。
さあ断れ、真鍋真昼!
「わかった」
一瞬、その言葉の意味がわからなかった。
実行委員は今度こそ撤回させまいと黒板のあたしと真昼の名前を問答無用で入れ替えた。
「え、ちょっと」
言いかけたあたしの言葉を女子たちの悲鳴が遮る。
その叫び声は悲痛と嫌悪と嫉妬と悲哀と歓喜が入り混じっており、教室中のガラスというガラスを叩き割るような勢いで響きわたった。
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