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昼休み、あたしは夕仁くんのクラスまで出向いた。カーディガンの件について謝罪するためだ。
確かに汚した犯人はいるものの、あたしがちゃんと教室までカーディガンをしまいにいっていれば防げたかもしれない事件だった。
「本当にごめんなさい! 弁償します!」
「移動教室の前に渡した僕が悪かったんです。けっこう高かったのでいいですよ」
「ならなおさらだよ。おいくら?」
夕仁くんが口にした金額にあたしはひっくり返りそうになる。想像していた額と桁がそもそも違う。あたしの着ているカーディガンが十着買える値段だ。
分割でもいいでしょうか……。恥を忍んでそう言おうとしたとき、突然夕仁くんがカーディガンのポケットに手を突っ込んだ。
中から出てきたのは、四つ折りにされた一枚のメモ用紙。
夕仁くんがそれを開いて固まる。
「かさかさ聞こえると思ったら、ポケットにこんなものが」
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