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「相手はいくらでもいるんだから、わざわざピィ子と付き合いたがる必要ないだろ、旭」
「あのね、相手は誰でもいいっていうのはつまり、ピィちゃんでもいいんだよ?」
旭さんがこてんと頭を傾けると、明るい茶髪の毛先が揺れた。アニメだったらきらきらのサウンドエフェクトが添えられているところだ。危うくそのルックスと経済力に流されてしまうところだったが、セリフはクズ人間そのものである。
あたしは我に返ってお好み焼きをひっくり返す。
「おれに経済力で殴るなって言うけど、じゃあ真昼はなにでピィちゃんを殴るつもりなの?」
「……愛情?」
旭さんは話にならないとでも言いたげに大げさに肩をすくめた。
「真昼、なんであれそもそもピィちゃんのこと殴っちゃダメじゃん」
「最初に始めたのは旭だ!」
それから旭さんと真昼はしばらくコントみたいな言い争いをしていた。弁の立つ旭さんが一方的に真昼をおちょくっているような感じだが、不思議と険悪な雰囲気にはならない。
このふたり、正反対に見えて案外相性がいいのかもしれない。
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