第2ラウンド VS夕仁

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 お好み焼きパーティーも終盤にさしかかったそんな頃、お茶を取りに立った夕仁くんがふとあたしに顔を寄せてきた。 「あの、ピィ先輩。お話があるんですけどいいですか?」  あたしが頷くと、夕仁くんがリビングから出て行くそぶりを見せる。 「おやおや。バトルが新展開を見せ始めたようだよ。どうする真昼?」 「ごまかすな旭。さっきの発言を撤回しろ!」  ふたりが再びじゃれあいの口論を始める。その混乱に乗じてあたしたちは廊下に出た。  まだ暦上は秋にも関わらず、十月下旬の夜は寒い。廊下の空気はひんやりしていて、一歩踏み出した瞬間リビングに戻りたくなった。しかしそれでも出てきたということは、夕仁くんの話というのはあのふたりの前では出しづらいような話題なのだろう。 「すみません、先輩はお仕事中なのに」  夕仁くんは猫背をさらに丸めてうつむいた。その視線の先は、青いスリッパのつま先に向けられている。 「ううん。大丈夫。どうかした?」  その時だった。パチン。ふいにスイッチを押すような音がしたかと思ったら、夕仁くんの口からいつもと違う声が飛び出した。某見た目は子供な名探偵に似た少年ボイスだった。
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