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事の発端は、今朝、人魚姫の台本が配られたことだ。真昼はすぐにあたしの席にやってきた。
「ピィ子、放課後一緒に練習しよう」
「絶対やだ」
クラスの合同練習の日は一週間後。それまでは、セリフを覚えたり道具や衣装を作ったりする準備期間となっている。だからあたしと真昼が一緒に練習をしなければならない必要はどこにもない。しかし真昼はこの前の第二回ピィちゃんバトルのことを気にしているみたいだった。
神様・俺様・真昼様の辞書には「諦める」という言葉がないのと同じように「人の気持ちを慮る」という言葉もない。
放課後になると真昼は再びあたしの席にやってきて、あたしのリュックサックを拉致した。
「返してよ」
「返したら、ピィ子、帰るだろ」
どうやら真昼は何が何でも一緒に練習をするつもりらしい。あたしは最後の手段に出た。
「……あっ。UFO!」
「えっ」
真昼が窓に視線をやった隙にあたしはリュックサックを奪って逃げ出した。
そして今に至る。
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