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「あたしっていつもこう。毎日お風呂で『なんであんなこと言っちゃったんだろう』って大反省会してるのに、短気でお節介で気づいたらいつも同じことを繰り返してる。他人のトラブルに首を突っ込んでも一円たりとももらえないのに。また新しいバイト探さなきゃだよ」
あたしの呟きを聞いているのかいないのか、またページをめくる音がする。
「ていうか、なんでそんなにたくさんバイトしてるんだよ。欲しいものでもあるのか?」
「今一番欲しいものは石油王サイン済の婚姻届かな……」
「ピィ子、頭大丈夫か?」
「あんたに言われたくないっつーの」
あたしは真昼を振り返り、親指と人差し指で丸を何個も作ってみせた。
「うちにはママの置き土産の借金があるの。ゼロがこれぐらいつくほどの!」
「ふぅん。お互い母親には苦労させられてるんだな」
真昼は反動をつけて机から降りると、その長い脚で六歩、あっという間にあたしの席まで歩み寄ってきた。
「動くなよ」
真昼がゆっくりとかがみこむ。その手が、体が、顔が、一気に近づいてきた。
「動くなって、じゃあ、動かなかったら、真昼はいったい何をするつもりなわけ」
返事はない。真昼の手があたしの額をなで、前髪をかきわける。うつむこうとすると反対の手があたしの頬にそえられ、無理やり目を合わされた。
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