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「なあ、今度の土曜日暇? 俺、午前中で部活が終わるんだ」
「暇じゃない」
あたしは咄嗟に答えた。確か、土曜日は夕仁くんと駅前の靴屋さんに聞きこみにいく予定だ。
「なんでそんなに食い気味に否定するんだよ。……何か、隠し事でもしてるのか?」
心臓がどきりとはねる。隠し事は、ある。やましい事はないから説明してもいいけれど、でも夕仁くんとのことを説明したら、必然的に嫌がらせのことも話さなくてはならなくなる。
もしそれを知った真昼がすごく心配してくれたら?
部活をサボって犯人探しを手伝うなんて言いだしたら?
夕仁くんの言った通り犯人をボコボコにしてしまって大問題になったら?
真昼にフォローの言葉をかけられたと言ったバレー部のみんなのことや、みんなに優しくするんだと言い切った真昼の変化を思うと、春高の代表決定戦前に彼をこんなややこしいことに巻きこむのはためらわれた。
「別に。ただのバイト」
あたしはそう言ってそっぽを向いた。真昼には、真昼にだけは、知られたくないと思った。
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