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「ど、どどどどどどうして、急になに」
「これまで僕のまわりにいたのは、旭兄さんと真昼兄さんの弟だからという理由でちやほやしてくる女の子たちばかりでした。でも、おいしいオムライスを作れて僕にもフラットに接してくれるピィ先輩は、その誰とも違っていて、僕にない人生経験を全部持ってる人みたいに見えました。だから『恋を教えてください』ってお願いしたんです」
夕仁くんはプラスチックのマドラーで無意味にコーヒーをかき混ぜる。
「でも先輩って意外と抜けてるところもありますよね。これから出かけるのに赤の他人に靴を貸しちゃうし、お金あんまり持ってないし、クリームついてるし。そこがかわいい」
夕仁くんが紙ナプキンであたしの口の端を拭ってくれる。
年上としては情けない限りだが、夕仁くんが「なんかこういうのドラマで見たことありますっ」と喜んでいるのでよしとしよう。
「ピィ先輩といると、僕の世界がどんどん広がっていく気がして、ドキドキします。先輩が相手なら、今までわからなかった恋だって経験できる気がします」
夕仁くんがまっすぐに見つめてくるのであたしはため息をついた。甘いはずの抹茶ドリンクがなんだか苦く感じられた。
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