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ビターンと音がしてあたしたちの席に面する窓に何かが張りついた。
野暮ったいあずき色の学校ジャージ姿を着こなす長い手足に、窓に張りついてもなおわかる端整な顔立ち――真昼だ。
隣の席の人が「うわっ」と声をあげた。あたしと夕仁くんはとっさに目を合わせて頷き合う。そうして他人のふりをすることを決めこんだものの、真昼がそれを許してくれなかった。
入り口にまわってコーヒーショップに入ってきた真昼はずんずんとこちらに向かってくる。
「真昼くん、ちょっと待って……!」
真昼のあとを追ってやってきたのはあやちゃんだ。しかし真昼はあやちゃんの制止も聞かずにあたしの隣の席に座った。
「ピィ子、バイトじゃなかったのかよ。ていうかなんで夕仁が一緒にいるんだ?」
先ほどの夕仁くんの言葉が頭に蘇る。真昼に聞こえたはずもないのにどこか後ろめたくて、あたしはとっさに真昼の肩を押し返した。
「あたしが休日に誰と一緒にいようが真昼には関係ないでしょ」
「そうだよ、デートだったら悪いよ」
あやちゃんが真昼のジャージの袖を軽く引く。
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