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「わたしたちがやるとしたら定規で書くなんて小細工はしない。犯人は高橋さんに筆跡を知られている人なんじゃないの?」
「あたしの友達にはこんなことする人なんていません! とにかくあなたたちじゃないのね」
あたしが立ち去ろうとすると、とりまきの二科さんと三好さんがあたしのブレザーの裾をぐんっと引っ張ってきた。後ろに倒れこみ、あたしはそのまま椅子に座らされる。勢いで大きく傾いだ椅子がぎいぎいと悲鳴をあげた。
一川さんがあたしの目の前に立つ。その顔には今までの悪行が嘘のように思えるほど友好的な笑みが浮かべられていた。
「わたしたちが犯人を見つけるのに協力してあげてもいいけど」
「何が目的?」
「真昼さまにはぐらかされてるカラオケ、高橋さんがセッティングして」
目の前に長い爪の先を突きつけられる。
なるほど、そっちにもあたしに恩を売るメリットがあるっていうわけね。
「わかった。協力してほしい」
あたしは一川さんの指を押しのけて彼女を見上げた。
「わたしたちの考える作戦。それはね――」
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