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真っ先に目に飛びこんできたのは床に落ちたあたしの上履きだ。そのつま先は解散したバンドの音楽性並みにバラバラの方向を向いている。隣にはいつも廊下に置かれているはずのプラスチックの花瓶が落ちており、水が床に広がっていた。
視線を上げ、そこにいた人物を見てあたしは言葉を失った。
「あやちゃん……」
あやちゃんは突然流れ出して止まらない暴れん坊将軍のテーマにあたふたしていた。
「今までのことは全部、あやちゃんがやったの?」
あやちゃんは何も言わない。
あやちゃんがやっていたなんて信じたくない気持ちの一方で、あたしの中で点と点が繋がっていく。
嫌がらせされるのがいつも朝早くなのも、筆跡を隠すために悪口のメモが定規で線を引くようにして書かれているのも、犯人があやちゃんなら納得がいくのだ。
でもあたしは、あやちゃんの口からはっきり否定してほしかった。
一川さんたちに「高橋さんに筆跡を知られている人がやったんじゃないの」と言われても、あやちゃんのことは少しも頭に浮かばなかった。
あたしはあやちゃんを信頼していたのだ。
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