122人が本棚に入れています
本棚に追加
各部活の朝練がもうすぐ始まるのか、遠くから誰かの笑い声が聞こえてくる。
「わたし、部活あるから」
あたしは立ち去ろうとするあやちゃんの腕を掴んだ。
「なんでこんなことしたの?」
「わからないふりなんかしないで!」
あやちゃんがあたしの手を振り払う。その目は濡れていて、今にも泣き出しそうだった。
「劇の配役が決まって悔しくて、ことりちゃんに嫌がらせしたの。それでことりちゃんが真昼くんから距離をとればいいと思った」
暴れん坊将軍のテーマが響き渡る中で、あやちゃんが唾を飲みこむ音はやけに大きく響いた。
「でも真昼くんがダメだった。この前の土曜日、せっかく真昼くんと部活の買い出しにいけるようこぎつけたのに、ことりちゃんたちと会った瞬間から真昼くんはわたしの話なんか上の空」
あやちゃんはふっと笑って落ちた上履きを拾い、差し出してくる。
「だからわたし、言ったの。ことりちゃんは夕仁さまと付き合ってるんだって。そしたら真昼くん、ショック受けてたね」
あたしは差し出された上履きを受け取ることができなかった。頭の中がぐちゃぐちゃで、三兄弟に言い返すときのように言葉が出てこない。
最初のコメントを投稿しよう!