第2ラウンド VS夕仁

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 上履きに足を突っ込んだ瞬間、ピコッ、と聞き慣れない音が耳についた。  もう片方も足を突っ込む。ピコッ。  歩き出すと、ピコッピコッ、立て続けに二回鳴った。甲高く耳障りなこの音は、笛がついているベビーシューズの音に似ている。  気づけば、まわりの生徒たちがじいっとあたしの足元を見ている。  あたしは慌てて上履きを脱ぎ捨てて中を覗いた。かかとの部分に明らかに後付けされたような布があり、それをめくってみると、中からは半透明のプラスチックのものが現れた。  形はお弁当用の醤油ビンに似ているが、押すと、ピコッと鳴る。こいつが元凶らしい。  あたしはそれを取ろうとしたが、強力な接着剤でつけられているらしくはがれない。事務室にスリッパを借りに行ったが文化祭で来客に貸し出すから今日は生徒には貸せないと突っぱねられた。  仕方がないので靴下で過ごすことにしたのだが、その理由を一川さんたち三人組にしつこく問い詰められた。渋々事の顛末を話したら「いい気味!」と三人は立てなくなるくらい大笑いした。  あんたらはどっちの味方なのよ!  どうやら、嫌がらせはまだ何も終わっていないようだ。  クラスの集合場所である空き教室に集まり、劇の時間や準備の段取りなどを確認する。うちのクラスの発表は午後の一番初めのため、お昼の十二時半には集合しなければならないとのことだった。
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