第2ラウンド VS夕仁

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 それからの自由時間は最悪だった。  一川さんたちに「真昼さまを呼び出してよ」とせっつかれるし、人ごみを抜けたらいつの間にか背中に「バカです」という紙が貼られているし、挙げ句の果てには勝手にのど自慢にエントリーさせられていた(大恥かいた)。おそらくあやちゃんの仕業だろう。  お昼になる頃にはへとへとになっていた。  劇の準備のため控え室の空き教室に向かうとあやちゃんがいた。文句のひとつでも言ってやろうと思ったのに、あやちゃんは一度もこちらに顔を向けない。その頑なな態度を見たらいきり立っていた気持ちもしぼんでいく。  ヘアセット中、あたしはずっと中指のささくれを見つめていた。  準備が終わり、体育館の舞台袖へと向かう。午後の部が始まるまであと二十分ほどあるため、ステージには幕が下りている。  最低限の照明だけがついた薄暗い舞台袖には二年二組のクラス演劇関係者がひしめきあっていた。あまりの混雑ぶりに、誰が来ていて誰が来ていないのかわからないくらいだ。  邪魔にならないようにと一歩脇によけたら、後頭部に何かが当たる。  そこにはバスケットゴールくらいの高さがある大道具のセットがいくつか置かれていた。「3B、後で片付けます」という張り紙がついているので、どうやら午前に発表したクラスのもののようだ。
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