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――あたしのせいだ。
真昼はあたしをかばって怪我をした。大事な大会前に怪我を負うリスクがあっても、あたしのことを助けてくれた。
それなのにあたしは意地を張ってばかりで、真昼が心配してくれている気持ちも受け取れなかったし、心配をかけたくなかったって言葉も素直に伝えられなかった。
あたしは床に座って膝小僧に顔をうずめる。黒々とした大きなものが胸を押しつぶすようで、息苦しい。
その時、ふいに空き教室のドアがあく音がした。
「ピィ先輩、ここにいたんですか」
顔を上げると夕仁くんが教室の入口に立っていた。
「真昼兄さん、もう病院から戻ってきたそうです。女子たちが後夜祭のパートナーにって血眼になって探してますが、どこにいるんだか見つからないらしくて」
あたしは慌てて立ち上がった。
「教えてくれてありがとう」
「待って!」
駆け出そうとすると、夕仁くんに教室の入口を通せんぼされた。
「この三週間ピィ先輩と一番長く過ごしたのは、第二回ピィちゃんバトルに勝ったのは、僕です。後夜祭、僕と一緒じゃダメですか?」
「ごめん」
考えるよりも先に言葉が出て、あたしは首を横に振った。
「あたし、真昼に謝らなきゃ。あたしのせいで、怪我、させちゃったから」
夕仁くんはそっと脇によけた。その顔は、なんだかすごく苦いものを飲みこもうとしているように歪んでいる。
「早く見つけないと、真昼兄さん、誰かに捕まっちゃいますよ」
あたしはひとつ頷いて空き教室を飛び出した。
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