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女子たちが血眼になって探していると夕仁くんが言っていた通り、途中で一川さんたちとすれ違った。真昼の靴があったから校内にはいるはずなのだが、教室をひとつひとつ順番にまわって探してもヤツはどこにもいないらしい。
それを聞いて、あたしの足は自然と動き出していた。ひとつ思い当たる場所があるのだ。
教室棟から特別棟に向かって渡り廊下を抜け、特別棟の階段をかけ上がる。二階、三階、四階……。
教室があるのはここまでだが、あたしは踊り場をまわってさらに上へ細長く続いている階段へと足をかけた。
夏頃、真昼があたしに「すごい」と言わせるために生徒会から屋上の鍵を借りていた。好きなだけ持っていていいと言われていたから、たぶん、真昼はあの鍵をまだ持っているはずだ。
屋上へとつながる青い鉄のドアを、体重をかけるようにして押し開けると、夕方の冷たい風があたしの前髪を吹き上げた。一瞬目を細めてから前を見る。
夕日に照らし出された屋上の真ん中で、真昼が寝そべっていた。
「ま……」
呼びかけようとしたときだった。
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