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「真昼くん!」
誰かが後ろからやってきて、あたしを追い抜いた。真昼が目をあける。
「おう、木下とピィ子じゃん。よくここがわかったな」
「わたしはことりちゃんのあとをつけてきたから。それより、怪我の具合は?」
真昼は寝転んだまま左手首を夕日にかざした。真っ白な包帯でぐるぐる巻きにされていて痛々しい。心臓がどくんと大きく鼓動する。
「ちょっとした打撲。医者が大げさに巻きやがった」
真昼は歯を見せてニッと笑った。
「真昼くん、明日の大会はどうなるの?」
「明日の状態次第だけど、医者は別に構わないって。監督さえ許してくれれば出るつもりだ」
「ごめんなさい」
「なんで木下が謝るんだ?」
あやちゃんはあたしをちらりと見て息を詰める。空気を読んで立ち去ろうとすると、あやちゃんはあたしのブレザーの裾を掴んだ。
一瞬、あやちゃんと目が合う。あやちゃんは涙を流しているのに微笑んでいた。
「お願い。いてよ、ことりちゃん」
あやちゃんがその場に膝をつき、コンクリートの地面に額をつける勢いで頭を下げた。
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