第2ラウンド VS夕仁

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 真昼はうつむいて厳しい顔をしている。とてもじゃないが声をかけられない。あたしはどうにも気まずくて真昼から離れてフェンス際に寄った。  校庭の隅っこには女子たちが集まっていて、その中心にはふたつの人影が見えた。  もしかして、いやもしかしなくても旭さんと夕仁くんだろう。きゃーっと黄色い悲鳴があがる。キャンプファイヤーの準備より盛り上がっているかもしれない。 「ピィ子がぶん殴るんじゃないかってヒヤヒヤした」  背後から真昼の声が聞こえてきた。 「そっちこそ」 「俺は殴らない。ムカつくけど、殴れない。だってあいつの気持ちわかるから」  しゃん、かしゃんとフェンスが揺れ、真昼が隣に立つのが気配で分かる。 「ピィ子が夕仁と付き合ってるって聞いてから、夕仁の飯に砂糖かけて嫌がらせしてやろうって何度も思った。実際一回やったけど夕仁は気づかねーしバカらしくなってやめた」 「陰湿すぎ」 「うるさいな。人を好きになったら誰でも陰湿になるんだよ。心の中ぐちゃぐちゃで、がんじがらめになって、にっちもさっちもいかなくなる。自分がこんなにイヤな人間だなんて思ってなかった。ピィ子はそんな風になったことなんかないだろ」  それに答えようとしたその時だった。
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