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「午後三時十六分。着火!」
生徒会長が大きな声で言うのが聞こえて、校庭に集められたゴミの山に火がつけられた。
たくさんのゴミを飲みこんで火がどんどん大きくなっていく。たった数百メートルしか離れていないのに、なんだかまるでテレビの向こう側で起きていることのように遠く感じられた。
「ごめん」
素直に言葉が出てきた。
「心配してくれたのに関係ないとか突っぱねたりして。大会に悪い影響があったら嫌だったの」
「いいよ、俺は優しくてちょっとのことは気にしないキが大きい男だからな」
「確かにあんたは気が大きい。でもたぶんそれ、ウツワって読むんだと思うよ。……って、真昼の天然ボケに順応しつつある自分が怖いけど」
「ウツワって、食いもんの話じゃないんだから。ピィ子はやっぱり食い意地張ってるな」
真昼がふっと微笑む。見たこともない柔らかな笑顔だった。
絶対に真昼が間違っているはずなのにそれ以上言い返せなくなってあたしは口をつぐんだ。
心臓が早鐘を打っていて、それ以上喋っていると口から飛び出てきそうだった。
どうしてこんなにドキドキしているのだろう。
その答えがちらっと胸をかすめたが、あたしは唾を飲みこんでそれを押しとどめた。
ただ雰囲気に流されているだけだ。あたしが真昼を好きになるわけがない。あたしは誰のこともほどほど以上に好きになったりはしないと決めているのだから。
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