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「すごいね、キャンプファイヤー。き、きれー」
あたしはごまかすように校庭を指さしたが、真昼はじっとあたしを見つめていた。
真昼の視線が向けられている顔の右半分が、火傷のようにびりびりと痛い。あたしはなぜだか真昼のほうを見ることができなかった。
「ピィ子が俺を好きになるまで、俺はもうピィ子に好きって迫ったりしない」
真昼がぽつりと呟いた。
「だから、ピィ子はもう解雇のことでキリキリしなくていい」
校庭脇の時計台が視界に入る。午後三時十七分、重なっていた長針と短針が再びズレる。校庭ではちょうどフォークダンスの曲が流れ始めていた。
どうして真昼は急にそんなことを言いだしたのだろう。真昼の考えていることがさっぱりわからなかった。
もしかしてこの一件で、あたしのことが好きじゃなくなったのだろうか。気になったが、理由を聞くのは「好き」って迫られたがっているみたいではばかられる。
「そ、そう……」
あたしはなんでもないことのように頷いて、キャンプファイヤーをじっと睨んだ。
あたしと真昼はそのままずっと一方通行の視線をもてあまし続けた。
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