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旭さんが泣きまねをする。どうやら勝ち目のないUNOには飽きてしまったようだ。
「ちなみにおせちでは何が好きなんですか?」
旭さんがしばし考えこみ、それからこてんと首をかしげた。
「オマール海老とレンズ豆のテリーヌとか?」
「却下!」
あたしは旭さんに背を向ける。
これだからちょっと育ちのいいお坊ちゃんは! どう考えてもそれはイタリアンレストラン考案の三万円ぐらいするおせちのメニューじゃないか!
「はい、あがり」
真昼がテーブルの上に残り一枚のカードを投げ捨てて立ち上がった。
「俺、部屋戻るから」
「ええ、じゃあ次はUNOじゃなくて将棋にしようよ、夕仁」
「旭兄さんが十九枚落ちで裸玉っていうハンデをつけてくれるならいいよ」
「ちゃっかりしてるなぁ。まあそれでもおれは勝つけどね」
三兄弟のゆるいおしゃべりをBGMに聞きながら、あたしは最後に残しておいたツリーのてっぺんの星型オーナメントを取り外しにかかる。
なにせツリー自体が真昼の身長ほどの大きさなのだ。指先は星の土台をかすめるだけでうまく掴むことができない。まったく届かないのなら諦めはつくけれど、あと数センチで届くので、椅子を使ったら負けな気がした。
「うーん」
飛び跳ねたり勢いをつけて背伸びしたりしていると、後ろからひょいっと手が伸びてきて、いとも簡単に星を外した。
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