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「ほら」
真昼が星型のオーナメントを差し出してくる。
「あ、ありがと……」
あたしがそれを受け取ると、真昼は「うん」とそっけなく頷いてリビングを出ていった。
『ピィ子が俺を好きになるまで、俺はもうピィ子に好きって迫ったりしない』
後夜祭での真昼の言葉が脳裏に蘇る。
あの宣言通り、真昼はあれからあたしに「好き」と言わなくなった。学校で追いかけてくることも家でつっかかってくることもなくなった。
どうして真昼が急にそんな態度になったのか、あたしにはわからない。ヤツの考えていることが何も読めない。
三兄弟の中で最も厄介な相手は真昼だった。その真昼が付き合ってと迫ってこなくなったということは、あたしの家政婦アルバイトは安泰だということだ。
せいせいするはずなのに、どうして真昼に対してこんな気まずさを感じてしまうのだろう。今まで「好き」って言ってくれていた人が言わなくなってモヤモヤするなんて、まるで、無意識のうちに真昼をキープしていたみたいじゃないか。あたしはそんな嫌な女だったのか。
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