第3ラウンド VS真昼

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 うちはあたしとお父さんのふたり暮らしだ。親戚も遠くに住んでいる。だからそれからは入院の手続きや準備、本当だったらお父さんとふたりでやるはずだった年末のあれこれに追われててんやわんやだった。  やっとすべてが終わる見通しがついたのは大晦日の夜だった。  お正月にそなえ、もう一時間も栗きんとんのさつまいもを裏ごしし続けている。テレビはとっくに消してしまった。年末特番から流れる笑い声は明るすぎて、ひとりではとうてい見られなかったからだ。  寂しいなぁ。  裏ごし器にさつまいもを足しながら、じんわりとそう思った。大晦日をひとりで過ごすなんて初めてだった。  この栗きんとんも、こんなに頑張って作ったところで食べるのはあたしひとりだ。おまけにまだ終わりそうもない。  ちょうどよくスマホが震えた。手を洗ってきて確認したが、メッセージがきたわけではなかった。  そりゃそうだ。クラスでは普通に話しても大晦日にメッセージを送ってくれるほどの親しい友達はいないのだから。  スマホの通知は、クラスラインのものだった。誰かが「今年はありがとう。来年もよろしく」と言い出し、みんながそれに乗っかって次々にメッセージを続けていた。  その中には、真昼の名前もある。
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