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「ごめん。間違えてかけちゃった」
『間違いか。いきなりピィ子から通話かかってきてびっくりした』
それっきり話が続かなくて、あたしも真昼も黙りこむ。時計の秒針の音とあたしの心臓の音が、同じリズムを刻んでいる。
「忙しかった? 邪魔してごめん」
どうにかしてその言葉を絞り出すと、真昼が電話の向こうでふっと笑うのが聞こえた。
『全然忙しくない。今ランニングから帰ってきたところだ。俺レベルになると大晦日でもせかせかしないんだよ』
「いつもせかせかしてて悪かったですね」
『ピィ子は何してるんだ?』
「栗きんとんの裏ごし。真昼ん家はおせち注文したんでしょ。旭さんが言ってた」
『そうなんだけどさ、旭のやつ、長男権限で毎年イタリアンおせち注文するんだよ。ラザニアだのオマール海老だのゴルゴンゾーラチーズだの』
「おいしそう~」
『ピィ子はほんと食い意地張ってるな』
「真昼にイタリアンおせちに対する感謝がないだけだよ」
それからしばらくくだらない雑談が続いて、気づいたら年明け五分前になっていた。
「もうこんな時間なんだ。久しぶりにこんな喋ったかも」
『うん。俺も』
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